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16 MAR 2021

AI Translation(企業インタビュー by Newsclip.be)

ニュース参照:

Newsclip - AI 翻訳 / ISHIDA TAISEISHA (THAILAND) CO.,LTD.

インタビュー:齋藤正行氏(Newsclip.be 代表)

回答者:ターンティップ・マピブールタンヤチャット / ISHIDA TAISEISHA (THAILAND) CO.,LTD. ゼネラルマネジャー



累計翻訳ワード数1億6000万ワード、タイ地場開発のタイ語AI翻訳

タイおよび周辺諸国で翻訳展開


――貴社概要をお聞かせください

 石田大成社タイランド(代表取締役社長:小山義一)は1999年設立、タイで22年の実績を誇ります。翻訳、ウェブサイトやモバイルアプリの開発、オンライン&オフラインマーケティング、印刷といったさまざまな事業を軸にメディア総合サービスを展開し、タイ国内外のお客様をサポートしています。

 弊社の親会社となる株式会社ITP(旧名:石田大成社)は1916年に京都で創業、祖業である印刷をはじめデザイン、編集、デジタル、翻訳、販売促進に至る各種情報サービスを提供、その歴史は今年で105年を数えます。

――さまざまな事業を展開されておりますが、その中でも翻訳事業というのはどのような言語に対応をしているのでしょうか?

 英語およびタイ語をはじめとし、東南アジア諸国言語への翻訳を展開しています。世界各地に拠点を構えるグループの中で、弊社はタイを中心とした東南アジアなどの周辺諸国を担当しています。

 タイは自動車産業を中心に数多くの日系メーカーが進出していることから、同産業に関連したタイ語翻訳が多いのですが、最近では弊社子会社ITPミャンマーを通じたミャンマー語への翻訳展開も増えています。ほかにも、ベトナム語、インドネシア語、ラオス語、マレーシア語など依頼に応じて翻訳をお受けしています。

――タイで自動車産業関連の翻訳が多いことは想像に難くありません。一方、東南アジア諸国ではどのような分野での翻訳が多いのでしょうか?

 政府資料、契約書、技術資料、カタログ、ウェブサイト、マーケティングメッセージ、教育資料などさまざまです。中でも日系企業へのサポートとして、取扱説明書、社内教育資料、特許関連資料、PR資料など産業界向けの技術資料に関係する翻訳を取り扱うことが多いといえます。ボリュームがある資料ではA4サイズで数千ページにも達します。

――数千ページとなると人間による翻訳は膨大な時間を要するはずですが、実際にかかる手間はどの程度なのでしょうか?

 例えば自動車の取扱説明書や修理書となると、200万ワードを超えることが多いです。これだけの規模の翻訳となれば、さすがに人間が全てを翻訳するにはコスト的にも時間的にも現実的ではありませんし、何よりも品質管理が維持しづらくなってきます。

 そこで私たちはいくつかのツールを駆使して翻訳データベースを完成させ、効率の良い運用を実現しました。過去に一度でも翻訳した文章は、その後の作業で翻訳し直すことなく適用できるようになっています。

 数千ページもの資料といっても、内容を事前に解析すると同一もしくは類似の文章が弊社データベースに存在していることが分かってきます。翻訳の必要がある箇所を最小限に絞り込んだ作業を進めていけば、手間を最小限に抑えることが可能です。

――人間による作業範囲を最小限に抑えることによってどの程度の効率が図れるのでしょうか?

 製品が完成した後に翻訳展開が開始されるパターンが多い、取扱説明書やPR資料などを例に挙げてみます。時間的なメリットとして、本来であれば3カ月かかる翻訳も、翻訳範囲の最小化によって1カ月にまで削減することが可能です。

 どのメーカーも製品が完成すれば一刻も早く市場に投入しなくてはならず、説明書や翻訳にかける時間を十分に確保する余裕がないのが実情です。そのような時間制約の中で、必要な翻訳範囲を機械的に最小化させることができれば、翻訳者はその最小範囲の文章に集中できますので、納品もお客様の販売日程に合わせることが可能となります。

 品質的なメリットについても同様の考え方となります。過去に翻訳された文章をデータベースから引用することができれば、過去と現在のそれぞれの資料で翻訳品質の統一が促されます。経験豊富な翻訳者とはいえ、数千ページの作業となると誤訳とはいわなくとも表記ゆれといった品質のブレが生じる心配は少なからずあります。機械的にケアすることで品質の維持と向上が実現できます。

人間とAIによる翻訳作業の分業化

――貴社は先ごろAI(人口知能)を取り込んだ翻訳技術の開発について発表されました。AI翻訳とはどのような技術なのでしょうか?

 簡単にご説明しますと、先ほどお話しした人間による作業部分にAIが加わるということです。人間のみが翻訳してきた作業範囲にAIを導入し、人間とAIによる分業化を実現しました。これはAIが人間に変わって作業するということではなく、機械学習で鍛え抜かれたAIが翻訳者と共同で作業を行っていくということです。

――人間とAIが共同で作業を進めていくということですが、お互いどのような関係性で働くのでしょうか?

 AIはとかく人間の知能を超えていると思われがちですが、ここでは人間が先輩でAIが後輩という関係でしょう。適切な翻訳が求められる点において、現時点ではAIが人間を追い抜く可能性は想像しづらく、私たちも今のところそこまでは追求していません。弊社は翻訳者がAIに翻訳を教えて鍛えるという考え方を取っており、翻訳者は機械学習で自分のパートナーとなるAIを育てていきます。人間がAIの性質をしっかりと理解し、どのような教え方がAIによる翻訳の完成度を最も高めるのかを考え、工夫することが必要です。

 機械学習によって成長したAIは翻訳者の作業を効率的に手伝い、翻訳作業の生産性を向上させます。本来1つの資料に人間として2人の翻訳者が必要だった作業も、AIとペアを組むことによって人間を1人に削減でき、2人の人間が別々にこなしていた作業も(人間とAIが)2人同時に取り組む事ができます。人間1人で進めていた作業であれば、AIが加わることによって作業時間は半分に節約できます。

 品質も人間とAIが一緒に確認して完成させ、次の工程に送り込みます。これによって翻訳工程における品質管理レベルが向上し、結果として翻訳の生産性が上がることになります。

――「品質管理」や「生産性」という言葉から、翻訳事業を製造業として捉えているように察しますが?

 親会社であるITPは105年前、印刷会社として創業しました。タイ現法の弊社は2011年に発生した大洪水で被災しましたが、かつては自前の大規模な印刷工場を構えていました。私たちの仕事への考え方、ビジネスの原点は製造業です。そしてお客様の9割が製造業です。

 マーケティングやIT・アプリ開発でも同様の考え方を持っていますが、私たちは翻訳事業でも「製造業としての翻訳」という理念を打ち立て、全ての作業を製造業という考え方で管理しています。製造業としてのマインドセットを持って生産性や品質管理を追求することで、お客様により良い製品とサービスを提供できると考えています。

――AI翻訳技術はタイスタッフによって開発されたとお聞きしましたが?

 そのとおりです。私たちは2015年から、機械翻訳に関する調査と研究を続けてきました。さまざまな情報が集積されてきた2018年、当初より私たちと一緒に研究活動を進めてきた小山(現タイ現法社長)と共に数多くのAI翻訳をリサーチし、今後は「AI翻訳と機械学習」の研究開発を進めていくという判断に至りました。

 タイにおけるAI技術開発は欧米諸国や日本、中国などと比較して遅れていることが多いといわれることが少なくありません。それゆえに、タイ語の翻訳、東南アジア言語の翻訳の世界においては、タイ人によるAI翻訳の開発、運用を実現させなければいけないという思いがあったのと同時に、翻訳業界の発展、同業者および顧客の生産性やコストパフォーマンスに繋がる、翻訳市場でのイノベーションを実現したいと思っていました。

 いろいろと苦労はしましたが、無事運用が開始されたことで、私を含めた関係者のモチベーションがさらに高まったと感じました。

――世界には多くのAI翻訳サービスが存在します。貴社のAI翻訳の強みを教えてください。

 AI翻訳の領域は広く、AI自体の仕組みを開発する企業、プラットフォーム化されたシステムを提供する企業、そして弊社のように開発もしつつ翻訳会社としての技術力を向上させる運用方法を取る企業などさまざまで、それぞれに強みがあると思っています。今後はそれぞれがどのような付加価値を備えていくか、ではないでしょうか。その付加価値が今後の事業の推進力に変わっていくと考えています。

 弊社は翻訳を主力事業としてきた会社ですので、翻訳会社としての長い歴史を持ち合わせています。何といってもタイ語で通算1億ワード以上を翻訳してきた「経験」が、私たちの付加価値であり強みだと自負しています。

 翻訳作業をAI化させることはさほど難しくはありません。翻訳を境とした「前工程」と「後工程」の部分こそ、翻訳会社のみが持つ経験値であり、誰もが容易に習得できるものではないといえます。私自身、ITPタイランドに入社して15年以上が過ぎましたが、その在職経験こそが今回のAI翻訳システムを完成させた最重要な要素の一つだと実感しています。

 AIを一人の社員と考えたとき、その会社にAI社員を育てる教育システムがあるのか、AI社員を助ける人間がいるのか、AI社員が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を備えているのか、いろいろと考えなければならない課題があります。そのような課題をクリアできる私たちだからこそ、AI翻訳のパフォーマンスを最大限に発揮し得るのであり、昨年末までの翻訳ワード数が累計1億6000万ワードに達したのだと信じています。それはまた、タイという国でなければ成し得ませんでした。これまでの経験を何よりの資産とし、会社と翻訳市場のさらなる発展に貢献できるよう、全力を注いでいきます。

――ありがとうございました。

 

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インタビュー回答者:ターンティップ・マピブールタンヤチャット

ISHIDA TAISEISHA (THAILAND) CO.,LTD. ゼネラルマネジャー、ローカライゼーション&イノベーションセンター長

チュラロンコーン大学、同大学院卒。日系大手自動車メーカーにて勤務後、日本の大学への留学を経て2006年にITP入社。翻訳事業部で100社以上の顧客向けの大型データベース翻訳等を手がけてきたほか、WEB・モバイルアプリケーション開発、デジタルマーケティング事業を統括、AI翻訳を始め大規模CRMやEC、各種モバイルアプリケーションなども手がける。

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